周遊きっぷについて
◆全国35の"ゾーン"をひとつ選んで乗り放題。ゾーン内は特急自由席もOK◆
◆行き帰りの乗車券が2割引&経路は自由。長距離なら、行って帰ってくるだけでもお得◆


ゾーン券
 「周遊きっぷ」は3枚の券からなるが、そのうち1枚が"ゾーン券"である。これは、"周遊ゾーン"を選び、その区間内を自由に乗り降りするための券だ。
 "周遊ゾーン"は全部で35地区があり、これについては時刻表の「営業案内」を見てほしい(写真はその一例・"山陰ゾーン")。
 ゾーンの範囲に比例して値段は様々だが、ともあれ有効期間5日の間、ゾーンの範囲内は特急の自由席を含めて乗り放題であり、JR線に加えて名所旧跡へ向かう私鉄やバスも入っている。

 ただし、有効期間を目一杯使って乗りまくらないと元が取れない価格設定であることが多く、ゾーン券だけを見ると「暇な人の切符」でしかない。
 「周遊きっぷ」をあえて大人向けに紹介するのは、次項の"ゆき券""かえり券"との相乗効果ゆえである

↑切符の画像はクリックすると拡大されます↓

ゆき券・かえり券
 「ゆき券」・「かえり券」は名前の通り、発着地と周遊ゾーンとの往復に使う券だが、JR線については普通運賃の2割引となる。それが「周遊きっぷ」をおすすめする最大の理由である。
 ゾーン券を買わされても、この2割引は大きい。東京起点で言うと、京阪神よりも先のゾーンであれば、ゾーンの中ほどまで行って帰ってくるだけで元が取れる。また日本海側などの航空運賃があまり安くならない行先では、飛行機で旅行するよりずっと得だ。
 なお、ゆき券・かえり券には学割も使え、その場合は3割引になる。勤労学生にも優しい。

 この2枚の券は、自分で経路を選んで『作る』
 旅行を開始する場所・終了する場所(これは同じでなければならない)と、ゾーンの「入口・出口」(ゾーンごとに数ヵ所の駅が指定されている)とを一筆書きで結ぶJR線ならばどういう経路でもよく、往路と復路とで入口・出口や経路が違ってもよい。
 一部の私鉄やJRバスも経路に組み込むことができる。また、北海道・九州・四国のゾーンについては、片道のみ航空券を買い、これを「ゆき券」「かえり券」の代わりにすることもできる(ゾーンごとに入口・出口にできる空港が指定されている)。

経路を選ぶ時の留意点・選べることの意味
 安く上げたければ一番距離の短い経路を探せばいいのだが、いい列車がなくて目的地にたどり着けない経路では何もならない。また距離・時間が最短でも、特急料金を含めると他の経路より割高になるケースもある。
 さらに気を付けなければいけないのは、「東海道新幹線を経由し、かつ入口・出口〜発着地の営業キロが600キロ以下しかない場合、割引率は5%に下がってしまう」というルールがあることだ。
 一方、ポジティブな使い方もある。
 有効日数・途中下車については普通乗車券と同じルールなので、ゾーンへの途中で降りてちょっと遊ぶ、といった計画も組める。また
「遠回りだけど、『一度乗ってみたいあの列車』や『一度通ってみたいあの沿線』に……」
といったプランも、往復で違う経路を組めること・2割引であることが背中を押してくれる。
 ただし、出発後に経路を変更することはできないので、計画的に旅行し、乗り遅れることのない様にしてほしい(例外として、新幹線←→並行する在来線の間での変更はできる)。


「周遊きっぷ」の買い方
 駅の"みどりの窓口"、それに旅行会社で、「ゆき券」の使用開始日(ゾーン券・かえり券とともに自分で指定する)の一ヶ月前から発売する。当日でも売ってくれるが、不慣れな係員さんもいるし、自分のミスもあり得るので、前日までに買っておきたい。

 たとえ口頭で指定する自信があっても、「どこからどこまで、どういう経路で『ゆき券』・『かえり券』を組むのか」を、紙に書き出しておいた方がいい。「××まで○○線経由、××から□□線経由…」などとマニアックに書く必要はなく、乗る列車を順に書き出せば通じるし、読み上げるより、むしろ紙を係員さんに見せた方がよい。
 初心者は駅よりも、座って話ができる旅行会社の方がいいだろう。


旅行の計画には時刻表も必要
 上述の通り、各地に設定された"周遊ゾーン"については時刻表を見てほしい。
 では、それ以外―――経路や列車の時刻などは、「駅すぱあと」「乗換案内」などの経路探索ソフトでこと足りるだろうか?
 否。こうした経路探索ソフトは、ごくメジャーな(鉄道について言えば、鉄道会社が売りにしている)行き方以外は簡単に教えてくれないのである。

 たとえば、上の説明で画像として出ている「山陰ゾーン」の周遊きっぷ。
 ここで、東京から鳥取へ"ゆき券"を組むとすれば、
.
@東京(新幹線)姫路(山陽線)上郡(智頭急行・因美線)鳥取…通常の運賃\11,130、標準的な特急料金\7,960
↑新幹線「のぞみ→ひかり」+特急「スーパーはくと」の経路。最も速く最も頻繁だが、最も高い。当然ながら鉄道会社が一番推奨する経路。
A東京(新幹線)京都(山陰線)鳥取…通常の運賃\10,190、標準的な特急料金\7,300
↑接続のよい組み合わせは限られるが、これが最短経路かつ最安値。京都まで新幹線→城崎まで特急→鳥取まで普通、という使い方をする。
B東京(新幹線)新大阪(東海道線)尼崎(福知山線)福知山(山陰線)鳥取…通常の運賃\10,820、標準的な特急料金\7,300
↑新大阪から一駅だけ普通で大阪→特急「はまかぜ」、または新大阪から特急「北近畿」→城崎から普通。Aより高いが頻度はあり、そして@より安い。
.
などといった経路が考えられる。
 どれも決してマニアックな経路ではなく、商用や帰省で関西〜鳥取を鉄道移動する人ならば、容易に思い浮かべられるものだ。
 ところが、条件を指定せずに「駅すぱあと」などで検索すると、@と飛行機しか教えてくれない。経由地を指定すればAやBも出てくるのだが、経由地を指定するには「AやBの経路がある」という予備知識がいる。つまり、特段の知識なしに「ふらりと出かけよう」と思った人はAやBを見つけることができない。
 さらに、@で新幹線を全区間「ひかり」にして、かつ「スーパーはくと」との乗換を姫路でなく京都にすると、1,200円以上割安にできる。しかしこの方法に至っては、経由地をどう入力しても出せなかった。

 金に糸目をつけずに済むなら別として、安く上げたければ、やはり時刻表がいる。また、たとえアップデートしていても、臨時列車や臨時停車はよほど頻繁にあるもの以外反映されない。
 ただしもちろん、検索ソフトは無用だと言っているのではない。経路さえ出れば運賃計算は速いし、新幹線〜在来線特急の乗継割引など、忘れがちな特例を押さえてくれているのは事実だ。
 要するに、併用すべし、ということである。まず検索ソフトを使ってから「他にないのか」と時刻表をめくってもいいし、逆に時刻表で選択肢を考えてから、計算の手間を省くためにソフトで試算してもいい(筆者は後者の方法を愛用している)。



戻る


inserted by FC2 system